明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
「じゃあ――澪、というのが君の名前か?」
「そうよ。森沢澪。森沢の家は――落ちぶれてしまったのだけど。御一新の後の世の中についていけなくって」
澪はほわほわ笑いながら肩をすくめた。「御一新」というのは明治維新のことだったかと桐吾は記憶を探る。
「みゃう」
澪が腕に抱いたままの猫――白玉が飼い主へ頬をすり寄せた。まるでなぐさめているみたいだ。
「んふふ。ありがと白玉」
「ふみゅう」
いちゃいちゃする澪と猫をながめ、桐吾は思い出した。
(澪姫が世をはかなんだのは、嫁ぐ相手に飼い猫を殺されたからだと文献に書かれていた)
となると澪と白玉は――〈祟り神と化け猫〉。
だが不思議と恐ろしくは思わなかった。むしろ可愛らしくさえある。そして何故か胸が締めつけられるのは――懐かしさ?
その意味不明な感情を振りはらい、桐吾は決意した。
「――澪姫」
「あん、姫はやめてってば」
「ならば澪――君に祟ってもらいたい連中がいる」