明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします

憎しみの理由


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 日曜日、久世正親(まさちか)はゴルフだった。同行しているのはSAKURAホールディングスの執行役員などなど。

「――いや久世さんの甥御さんというのは写真だけでも大そうなイケメンですな。釣書でお嬢さんが乗り気になるわけですよ」
「はっはっは。恐れ入ります」

 桐吾が見合いさせられると憂えていた相手は、このSAKURAホールディングス創業者一族・桜山守(さくらやまもり)家の娘なのだった。グループトップの、というわけではなく傘下企業を経営する傍流の娘にすぎないのだが、桜山守家とのパイプとしては十分な人間。
 こんな良縁、正親だって甥に回すより実子に欲しい。が、あいにく息子はとっくに既婚者だった。

(桜山守と結んで、久世建設をSAKURAホールディングスの傘下にする)

 それが正親の目標だ。そうすれば大規模開発案件を請け負う機会も増える。業績の効率も上がるだろう。
 父である会長は反対するが、もう建設会社単独で世を渡っていく時代ではないと正親は考えていた。桐吾はそのための駒にするつもり。会長の覚えめでたい桐吾をこのままにしておけば、正親の息子がトップに立つ邪魔にもなるので一石二鳥だった。
 桐吾などSAKURAの末端のどこかで飼ってもらえばいい。久世の本流はあくまで正親とその息子だ。

 第四ホールが始まったばかりの時だ。従っていた秘書が怪訝な顔で正親にスマホを差し出す。

「緊急のメールのようです」
「何? ……ああ、いや失礼を」

 正親は笑顔で取りつくろいメールとやらをチェックした。心臓が止まりそうになった。発信者は高橋華蓮。

 ――添付されていたのは、赤ちゃん用品店に入っていく桐吾と澪の写真だった。


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