明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
今日の献立は秋刀魚の塩焼き、豚汁、青菜のおひたしに出来合いのマカロニサラダ。桐吾の手に負える、基本のメニューだ。このぐらいなら調理実習の記憶でなんとかなるだろう。
グリルの使い方や粉末出汁など、澪が知らないことはたくさんあった。桐吾も一人ではあまり料理などしないので右往左往する。一緒に悩みながら台所に立つのが楽しかった。
澪は、名主の娘ということもあるのか包丁に慣れていないようだった。切った野菜の不揃いなことといったらない。だが豚汁のアクを取る手つきはしっかりしていた。
「澪は肉が嫌じゃないのか? 昔は魚が多かっただろう」
「だって、猪や鹿なら山で獲れたから」
「……なるほど」
ガチめのジビエ。というと猪鍋か何かでアク取りも経験済みなのかもしれない。
「あのあたりは今でも森と渓流が残っているな……街道の、山越えの手前にある宿場として栄えていたんだったか」
「よく知ってますね。あ、今でも向こうに久世の本家があったりするんですか?」
「いや……久世は土地を管理してるだけだ。もう一族は街に出ている。仕事がこっちだからな」
桐吾の声が淡々とした。心を抑えた物言いに澪は不安になる。桐吾の横顔をうかがい、迷った。
(ずっと訊けていない……久世のこと、桐吾さんはどうして嫌うんだろう)
それがそもそも澪と桐吾の始まりだ。出会った日、「久世の伯父を祟って追い落としたい」と望まれた。いったい何があってなのか。
「あの」
「ん?」
意を決して澪は口をひらいた。
「桐吾さん、久世家が嫌いなのはどうしてですか」
グリルの使い方や粉末出汁など、澪が知らないことはたくさんあった。桐吾も一人ではあまり料理などしないので右往左往する。一緒に悩みながら台所に立つのが楽しかった。
澪は、名主の娘ということもあるのか包丁に慣れていないようだった。切った野菜の不揃いなことといったらない。だが豚汁のアクを取る手つきはしっかりしていた。
「澪は肉が嫌じゃないのか? 昔は魚が多かっただろう」
「だって、猪や鹿なら山で獲れたから」
「……なるほど」
ガチめのジビエ。というと猪鍋か何かでアク取りも経験済みなのかもしれない。
「あのあたりは今でも森と渓流が残っているな……街道の、山越えの手前にある宿場として栄えていたんだったか」
「よく知ってますね。あ、今でも向こうに久世の本家があったりするんですか?」
「いや……久世は土地を管理してるだけだ。もう一族は街に出ている。仕事がこっちだからな」
桐吾の声が淡々とした。心を抑えた物言いに澪は不安になる。桐吾の横顔をうかがい、迷った。
(ずっと訊けていない……久世のこと、桐吾さんはどうして嫌うんだろう)
それがそもそも澪と桐吾の始まりだ。出会った日、「久世の伯父を祟って追い落としたい」と望まれた。いったい何があってなのか。
「あの」
「ん?」
意を決して澪は口をひらいた。
「桐吾さん、久世家が嫌いなのはどうしてですか」