明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
✿ ✿
「ただいま――」
最初は出なかったその言葉がスムーズに言えるようになった。それは桐吾の進歩だと思う。
お手伝いさんしかいない家に帰り、大学からは一人暮らし。そんな桐吾にとって澪の存在はなんだかくすぐったい。
「桐吾さん、おかえりなさい!」
「おーう、帰ったか」
澪と一緒にソファでくつろいでいたのは少年姿の白玉だった。現代風に着替えてみている。
ベージュの長ズボンと白Tシャツ、その上にブラウンの前開きパーカーを羽織った見た目は文句なしに小学生だ。真っ白の髪とピンと立つ耳をのぞけば。
「猫耳を出すな」
桐吾は白玉のパーカーフードを無造作にかぶせ、隠した。本当に引っ込めていてほしい。だが白玉はクククと笑ってフードを外した。
「澪は我の耳を可愛いと言うのでな」
「……可愛い? ひい爺さんなんだろう?」
「でもこうしてると男の子ですもの」
ねー、と澪は少年の頭をなでた。そのやさしい視線が桐吾を苛立たせる。
だが今日は、桐吾だって澪にしてもらったことがあるのだ。偽の夫は化け猫に張り合った。
「……おにぎり、美味しかった。ありがとう」
「ほんと? よかった!」
澪ははにかむ。料理は無理しなくていいと言われたが、ちょっと情けなかった。なので握り飯だけでもと頑張ったのだ。だって、ちゃんと〈妻〉をやってみたい。
喜ぶ澪の隣で白玉はゆらりと立ち上がった。桐吾のことをしげしげと眺める。
「ふふーん。今日は女を泣かせて来たな?」
「ただいま――」
最初は出なかったその言葉がスムーズに言えるようになった。それは桐吾の進歩だと思う。
お手伝いさんしかいない家に帰り、大学からは一人暮らし。そんな桐吾にとって澪の存在はなんだかくすぐったい。
「桐吾さん、おかえりなさい!」
「おーう、帰ったか」
澪と一緒にソファでくつろいでいたのは少年姿の白玉だった。現代風に着替えてみている。
ベージュの長ズボンと白Tシャツ、その上にブラウンの前開きパーカーを羽織った見た目は文句なしに小学生だ。真っ白の髪とピンと立つ耳をのぞけば。
「猫耳を出すな」
桐吾は白玉のパーカーフードを無造作にかぶせ、隠した。本当に引っ込めていてほしい。だが白玉はクククと笑ってフードを外した。
「澪は我の耳を可愛いと言うのでな」
「……可愛い? ひい爺さんなんだろう?」
「でもこうしてると男の子ですもの」
ねー、と澪は少年の頭をなでた。そのやさしい視線が桐吾を苛立たせる。
だが今日は、桐吾だって澪にしてもらったことがあるのだ。偽の夫は化け猫に張り合った。
「……おにぎり、美味しかった。ありがとう」
「ほんと? よかった!」
澪ははにかむ。料理は無理しなくていいと言われたが、ちょっと情けなかった。なので握り飯だけでもと頑張ったのだ。だって、ちゃんと〈妻〉をやってみたい。
喜ぶ澪の隣で白玉はゆらりと立ち上がった。桐吾のことをしげしげと眺める。
「ふふーん。今日は女を泣かせて来たな?」