明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
 伯父越しではどうにもならないが、直接話して円満に断ろうという肚づもりだった。SAKURAホールディングスともめるのは避けたい。傘下に下るかどうかは別の話であり、こんな個人的な問題で業務に支障をきたすのは桐吾の本意ではなかった。

「澪には少し離れたところで待機していてもらいたい」
「私がいなくていいんですか?」
「最初から刺激してもなんだからな――会わせろと言われたらでいいだろう」
「なら我は人の(なり)で澪とともに待っていよう」

 白玉が宣言した。澪は小首をかしげる。どうして人と指定するのか。

「……猫でもいいのよ?」
「いかんいかん。我のように美しい白猫を連れ、愛らしい澪がひとりでおるなど許されん。ナンパされまくるぞ!」

 言われたことがよくわからずに、澪は首をかしげた姿勢のままだ。だが桐吾は深くうなずく。そんな未来がまざまざと見えた。

「そうかもしれない。だが白玉おまえ――」

(ナンパって、おい)

「――何かの動画とかドラマで覚えたのか?」
「ふっふーん。気にするでない。桐吾がおらぬ間は我が澪を守っておくでな」
「……現代に詳しくなってくれるのは助かるが。人間のフリをするなら絶対に耳は出すなよ」

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