明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
 白髪とオッドアイも悪目立ちするが、猫耳は本気で困る。
 白玉は興奮すると耳がピョコンと出るらしいのだ。外でうっかり猫耳を見られないためにフードか帽子が必要だと主張したのは桐吾だった。猫耳の言い訳といえば「コスプレです」ぐらいしか思いつかない。ならば最初から隠しておく方がいい。

「サングラスも必須だ」
「うるさいのう、心配性め。はげるぞ」
「なんだか懐かしいタイプの罵倒だな? さすが百六十歳。これだから爺さんは」
「うるさい、ひよっこめ」
「ふ、うふふ」

 桐吾と白玉の口喧嘩に澪は笑った。喧嘩するほどなんとやら、だ。
 仲良くなってくれて嬉しい。大好きな二人だから――と思ってから、澪は(あ)となった。

(桐吾さんのことも、すんなり大好きって……)

 桐吾は昔の許婚・冬悟に似ている。だから一緒にいて安らぐのだと思い込んでいた。でももしかして澪は、桐吾本人のことを――?

(どうしよう、私)

 澪が〈妻〉でいるのはお見合いを壊すため。澪などなんの力もない祟り神なのに、桐吾を想うなどきっと迷惑だ。だって桐吾は――人間だから。

 もうすぐ見合いの日がやってくる。
 その後で澪は。白玉は。
 テーブルの向かいで食事を続ける桐吾を見つめ、自分の気持ちに澪はうろたえた。


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