明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
 ✿ ✿


 土曜日の午後、澪はおめかしして車に乗った。ハンドルを握る桐吾は平日と同じスーツ姿だ。

「なんとか見合い前にアポが取れてよかった」

 桐吾は仕事上の肩書をフル活用して桜山守向日葵に連絡をつけた。向日葵は用件を察したはずだが、直接会って話すべきとの返事。それは当然の礼儀だと思う。
 仕事で忙しいという向日葵の指定する日時にホテルへと向かった。気楽にロビーで待ち合わせをと言われていた。

「……私、おかしくないですか」

 澪は自信がなくてモゾモゾした。
 着ているのはサーモンピンクのワンピースとボレロの上品なセットアップ。ブラウンのレースがあしらわれアクセントになっている。秋らしくて華やかな装いだった。
 だが今日の澪はそれだけではなく、薄い化粧もしていた。ノーメイクで人に会うと相手にあなどられると白玉が進言したのだ。

(だからその知識はどこで?)

 澪もあきれてしまったが、桐吾が同意したので仕方ない。白玉の指導に従いメイク用品を手に入れ、ほんのりナチュラルメイクをほどこした。

「ちゃんとしてるから安心しろ」

 ボソッと桐吾は答えた。ぶっきらぼうなほめ言葉。澪はへにゃ、となる。

「ありがとう……」
「どのような格好であっても澪は愛らしいのだ」

 後部座席から白玉がうむうむ、とうなずいてみせる。クリーム色のパーカーと秋色チェック柄のズボンが活動的。だがブラウンのサングラスが得体の知れない小学生男子がそこにいた。

「おい白玉。そのしゃべり方、人前ではどうにかしろ。姿とそぐわない」
「ふーむ? 我のコレか? ……ええっとぉ、僕よくわかんないや! とかでどうだ」
「……キモいがオーケーだ」
「キモいとは失礼な奴め」

 運転席と後部座席とで二人が言い合うのを聞きながら、澪はずいぶん気が楽になっていた。
 みんな一緒なら、きっとうまくいく。

< 67 / 177 >

この作品をシェア

pagetop