明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
  ✿

 約束の十分前、三人はホテルに足を踏み入れた。

「わ……!」

 これまでに澪が訪れた駅やレストラン、ショッピングモールとはまた違う豪奢な雰囲気にのまれてしまう。吹き抜けのロビーにはシャンデリアが煌めいていた。

「二人はそっちのソファにいてくれ」

 あたりを見回しながら桐吾が指示した。桐吾は一人離れて待機するつもりなのだ。白玉が澪の手をきゅ、と握る。

「僕がいるから、平気だよ」

 小学生モードでにっこりし、手を引いてくれる白玉。微笑み返した澪が歩き出した時、カツカツとヒールの音高く近づく女性がいた。

「お待ちしていましたわ!」

 深い紅のスーツとフリル襟のシャツを着こなすその人は、真っ直ぐに桐吾を見つめる。
 栗色に染めたワンレングスのロングヘアがファサ、となびいた。浮かべた余裕の笑み。堂々たる歩き方。
 配る視線はもう澪のことも捉えていた。去るタイミングを失い澪は立ち尽くす。

 ――これが桜山守向日葵。たぶん。もう来ていたのか。

「悪役令嬢……?」

 白玉がつぶやくいた。
 髪型こそ縦ロールではないが、「おーっほっほっほ!」という幻聴が聞こえた気がしたのだ。

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