明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
 うふふ、と澪は嬉しげだ。

(俺が、やさしい?)

 そんな評価をされたことがなくて桐吾は戸惑う。冬悟と重ねて見られているだけな気がした。咀嚼しながら気持ちを落ち着かせる。

「昔の冬悟みたいか」
「……ううん。桐吾さんはあの人と違う」

 澪はぽやんとしながら過去を思い出す顔をした。

「桐吾さんの方が厳しい目をしてる。にらまれるとちょっと怖いの。でも笑うとやさしいんだわ。あ、あと背がすごく高くて」
「……現代人の方が発育がいいんだ」

 やさしいと言う澪の声の方がやさしくて、桐吾の声が詰まりそうになった。
 澪になら、いくらだって笑いかけたい――なのに習慣づいた仏頂面が抜けない自分が悔しかった。久世の家であなどられないよう気を張って生きてきた弊害だ。
 だが今日は正直に言おうと思った。ずっと心に掛かっていたことを訊かなくてはならない。

「澪は――昔の許婚のこと、どう思ってる。俺の妻役なんかを押しつけて迷惑だったんじゃないか?」
「え――」

 まなざしを険しくしながら尋ねられ、澪は目をみはった。
 
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