明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
(桐吾さん、そんなこと気にしていたの)

「冬悟さ……許婚だった方の冬悟さんは死んじゃったのよ? どうしようもないもの。喪に服してたのは新しい相手が大っ嫌いだったからで」
「でも俺が水無月の血すじだとわかった時、澪は泣きそうだった。昔の許婚を思い出したんだろう?」

 畳みかけられて澪は考えた。泣きそうだったのは覚えていないけど『桐吾さんは桐吾さんだ』と向日葵に啖呵を切った時に考えたことは。

「――私ずっと、ふわふわしていたの」
「ふわふわ?」
「あのね、死んでから百五十年経ったって言われても信じきれなくて。桐吾さんが冬悟さんに似ているのも、私が見たがっている幻なのかなって思った」

 それは疑っても仕方ないことだ。
 封印が解けた祟り神なんてどういうことだと我ながら思った。桐吾と冬悟の顔立ちが似ているといっても記憶が補正されただけで澪の思い込みかもと疑っていて――。

「俺と冬悟は本当はそんなに似ていない、と?」
「そうかもって心配だったの。でも桐吾さんが水無月の血すじだって聞いて安心した。昔と今はちゃんと続いていて、知らない街にいることも桐吾さんの姿も嘘じゃないんだって思ったら――嬉しくて」

 涙目だったのは嬉しかったから。その答えはとても澪らしかった。澪は照れ笑いしながら伝える。

「名前が久世でも水無月でも、あなたはあなただわ。私、桐吾さんと会えてよかった」

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