明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
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 ――――久世を祟った女を封じる祠。その存在を知った桐吾はこの林へ見物に来た。
 ここは澪が身を投げたと伝わる池の近く。つまり久世の土地がすぐそこにある。桐吾には慣れた道だった。
 朽ちかけた祠はあっさり見つかった。だが桐吾はどうしたものか迷う。元は休日の気晴らしにドライブに出ただけ。探し出したからといって何もする気はなかった。

(軽く供養でもして帰るか)

 ひどく傷んだ祠が哀れだった。そのうち建て直してもいい――そう考え周囲を確認してみる。
 歩いたら何かにつまずいた。草むらに蹴り倒してしまったのは、大きくない石だ。何かの文字が彫られている。

(――そうだ、脇に猫塚があると記述があったはず!)

 不敬をした、と思った時には遅かった。あたりに霧が湧く。

『にゃあ――ぉ!』

 不気味な猫の声が響いた。
 ガサッ。
 草を踏む音がし、あらわれた白猫。軽やかに祠に向かって跳ぶ。
 ドン! ガラガッシャーン!

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