婚約破棄されたけれど、10年越しの初恋を諦めきれません
挑むような視線を送った私に、司さんはふっと笑った。

「でも俺は、その“勝ち組”に甘んじるつもりはないよ。」

司さんは、私の目をまっすぐに見つめて言った。

「必ず自分の実力で、社長の座を掴みに行く。」

その瞬間、胸の奥が熱くなった。

世の中を斜めに見ていた私が、初めて“誰かを尊敬したい”と思った。

それが——私の初恋の始まりだった。

司さんの指導は的確でわかりやすくて、時に厳しく、時に優しかった。

私は努力を重ね、無事に一流の進学校に合格し、その後、有名大学へと進学した。

けれど、心のどこかには、いつもあの人がいた。

——久遠 司。

二十歳になったある日、私はついに行動に出た。

あの人に、もう一度会いに行こうと決めたのだ。

向かったのは、久遠商事。

父の会社の取引先でもある、都内の一等地にある高層ビル。

受付の女性がきっちりと微笑みながら声をかけてくる。
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