拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく

 ヴァルは腰に両腕を当て、フィーヌを見上げる。

「ううん、探さなくていいわ。わたくしね、もうあの人達を助けるのはやめることにしたの」
「へえ、それはいい考えだね! うんうん、やめちまうのがいいよ! あいつら、オイラのフィーヌを虐めるからキライだ」

 ヴァルはふんっと鼻から息を吐き腕を組む。
 
「まあ、ふふっ。そうね。それでね、ちょっとお灸をすえてやろうと思うの。協力してくれる?」
「もちろんさ。何をすればいい?」

 ヴァルはうきうきしたように、目を輝かせる。

「領地内にある金鉱石の周囲を、ほんの少しだけ固くしてほしいの。ちょっとやそっとじゃ掘り当てられないくらい」
「ほんのちょっとでいいのか? カチコチにしてやるよ」
「ううん、ほんのちょっとでいいわ。あんまりカチコチにしたら、誰も掘り返せなくなってしまうもの」
「ああ、そっか。さすがオイラのフィーヌは天才だな」

 ヴァルは納得したように頷く。

「じゃあ早速、ちょっくら作業してくるよ。じゃーな」
「ええ、ありがとう」

 フィーヌはひらひらと片手をふる。
 ヴァルがいる場所につむじ風が吹き、忽然とその姿を消した。

「わたくしも戻ろうかな」
 
 部屋へと続くテラスに繋がる階段を上りはじめたフィーヌは、ふと屋敷の門が開かれたことに気付いた。
 見慣れない四頭立ての馬車が入ってくるのが見える。
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