拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
(でも、責任感からだけで好きでもない女を娶らせるのはさすがに──)
罪悪感からいたたまれない気持ちになる。
ホークはバナージから呼び出されて巻き込まれた、被害者だ。ただでさえ被害を被っているのに、その上さらにフィーヌを娶らせるのは良心の呵責に耐えられそうにない。
しかし、ホークの様子を見ている限り、この球婚を断っても納得するそぶりはなさそうだ。
(どうにかして、彼にとっていい方法がないかしら?)
フィーヌは悩む。そのとき、ふと閃いた。
「ロサイダー卿。ロサイダー領は土地が痩せ、産業もないと聞いたことがあるのですが、事実でしょうか?」
「……ああ。事実だ」
少しの沈黙ののちに、ホークは頷く。
それを聞いて、フィーヌは口元に笑みを浮かべた。
(それなら、ロサイダー領に行けばお役に立てるかもしれないわ)
なにせ、フィーヌは土の声を聴くことができる。大地に働きかけて土壌改良するのもお手の物なのだ。
「わかりました。求婚をお受けいたします」
フィーヌは覚悟を決めて、頷いたのだった。
◇ ◇ ◇
フィーヌがホークからの求婚を受け入れた翌日。
バナージは社交サロンで貴族令息仲間と昼間から酒を飲みながらポーカーゲームに興じていた。
「おい、バナージ。お前、ショット侯爵家のレイナ嬢と婚約したって本当か?」
友人に聞かれ、バナージは頷く。