拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく

「食事の準備が整ったようだ。行こう」

 声をかけてきたのはホークだ。
 フィーヌのすぐそばに近づいてきた彼から、ほんのりと石鹸の香りがする。

 それだけで、情事を連想させるには十分だった。
 
「……申し訳ございません。疲れていて食欲がなく──」

 フィーヌは言葉尻を濁す。
 今愛人に会いに行ってきたばかりの男性と仲良く食事するほど、フィーヌは寛容ではない。

「たしかに顔色が悪いな。体調が悪いのか?」

 ホークは眉根を寄せると、フィーヌの額に触れる。

「熱はないようだな」
「……少し休めば大丈夫です」

 フィーヌはふいっとホークから顔を背ける。
 
「わかった。では、食事は部屋に運ばせよう。ゆっくり休め」

 ホークはそれだけ言うと、ドアを閉めて立ち去ってゆく。
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