拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
程なくして、メイド姿の若い女性がトレーに載せた食事を運んできてくれた。
フィーヌとそう変わらない年頃の、くりっとした目元が印象的な可愛らしい女性だ。
「奥様、ご挨拶が遅くなり申し訳ありません。本日より奥様付きとなりますアンナと申します」
「そう。これからよろしくね、アンナ」
フィーヌが挨拶を返すと、アンナは嬉しそうに顔を綻ばせる。
「旦那様がご結婚なさると聞いて、ずっと奥様がいらっしゃるのを楽しみにしていたんです。こんなに美しいお方だなんて──」
感激したように言われ、フィーヌは反応に困る。
きっと彼女は、ホークに恋人がいることを知らないのだろう。
「ねえ、アンナ。この屋敷にシェリーさんという方はいる?」
「え? シェリー? ああ、時折厨房におりますね。どうしてそんなことを?」
アンナは不思議そうにフィーヌを見返す。
「あ……えっと、この部屋に来る途中に屋敷の方が話しているのが聞こえたの。とても可愛い方だと──」
「たしかに可愛いですね」
アンナはシェリーのことを思い出したのか、朗らかに微笑む。
(じゃあ、その厨房にいるシェリーさんがホーク様の恋人なのね)
フィーヌは曖昧に微笑んでその場をやり過ごした。