拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
「はい」

 フィーヌは頷く。

「では、きみも誓いを」

 促されて、フィーヌはホークの握る剣の柄に手を添える。

「この剣と全知全能の神に誓います。この地にいる間はロサイダー領のために全身全霊で尽くしましょう。見返りには、二年間子供を作らないことを」
「なんだと?」

 ホークの声が一段低くなる。

「なぜそのような見返りを要求する?」
「妊娠してしまうと、女性は色々と行動が制限されますから。まずは領地を豊かにすることに専念したいのです」

 フィーヌはホークに訴える。
 本当は二年後の離婚を誓約にしたかったが、それはさすがに拒否されると思ったので代わりに〝子供を作らない〟とした。
 貴族の当主にいつまでも子供ができなければ離婚が認められる可能性が一気に上がるが、その目安は二年とされている。
 だから、二年後に離婚を申し出ようと思ったのだ。
 
 「なるほど?」

 納得したようなしていないような様子で、ホークは頷く。

「では、これにて誓約は成立だ。俺はフィーヌに辺境伯にふさわしい待遇を用意し、きみはロサイダー領のために尽力する。そのかわり、きみは俺を裏切らず、俺はきみを二年間孕ませない」
「孕ませないって……」

 フィーヌは赤面する。
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