拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
「きみがそう望んだんだろう?」
確かに内容はその通りなのだが、言い方というものがあるだろう。
「少しだけ痛むが許せ。血がないと誓約が成立しない」
「はい」
ホークは持っている剣でフィーヌの指先をほんの少しだけ傷つけると次は自分の手にも同じように傷をつけた。
剣にぽたりとふたりの血が滴り落ちると、ふわりと濃紺色の靄が浮き上がり、ふたりを包み込む。
(これが呪術?)
呪術はかつて、王侯貴族を中心に権力争いによく利用されていたが、今では見ることがほとんどない。フィーヌが見るのも初めてだった。
やがて靄が解け、部屋は何事もなかったのように静粛を取り戻す。
ホークは手に持っていた剣を軽々と元あった壁際の台に戻すと、再びベッドのほうに歩み寄り彼女のすぐ前に立った。
(え?)
手が伸びてきたと思ったら、顎を掬われて荒々しくキスをされた。
手で胸を押してもびくともせず、ようやく唇を解放されたときにはフィーヌは肩で息をしていた。
「な、何をなさるのですか! 二年間は子供を作らないって──」
フィーヌは抗議の意を込めて、ホークを睨み付ける。
今確かに誓約をしたのに、その直後に反故にするなんて。
「ああ、作らない」
「じゃあ、なんで──」
「子供っていうのは、ここに俺の子種を注がなければできない。知らなかったのか? それに、きみに触れないという約束はしていない」
フォークは指先でフィーヌの下腹部をなぞる。
「なっ!」