拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
 舞踏会で一緒に休憩室に閉じ込められたときのフィーヌの姿が脳裏に蘇る。凛として前を向いていたフィーヌは、あの場で陥れられたようなふりをしながら実際にはバナージを利用していた。
 温室育ちの貴族令嬢には、なかなかあんなことはできないだろう。

「それよりも、仕事の話だ。騎馬隊の馬の調達はどうなった?」
「商人が明日連れて来ると。今回はいい馬がたくさんいるらしいですよ」
「それは期待できるな」

 ホークは相槌を打つ。
 
「これを機に、そろそろホークも相棒を交代させたらどうだ?」

 カールの提案に、ホークは首を横に振る。

「いや、いい。俺はシェリー以外そばに置く気はない」
「……そうか。ホークは本当にシェリーを大切にしているよな」

 カールはしみじみと言う。
 
「命の恩人だからな。当然だろう?」
「まあ、そうだな。夕食前に会いに行くのか?」
「そのつもりだ。俺の手から食べる姿が愛らしいんだ」
 
 ホークが愛馬──シェリーに乗り始めたのは五年ほど前からだ。当時、ホークは別の馬に乗っていた。しかし戦いの最中、敵の矢に打たれてその愛馬は倒れてしまった。
 そんなとき、颯爽と現れたのがシェリーだった。
 状況から判断するに、シェリーは戦いの最中で主を失った馬のようだった。馬を失っていたホークは本能的にシェリー跨り、無我夢中に走らせた。
 
 そのときの戦果は素晴らしいものだった。
 
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