拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく

 シェリーは牝馬なこともあり、軍馬にしては線が細く足が特別速いわけでもない。それでもホークはシェリーのことを勝利の女神のような存在だと思っており、彼女が走れる間は乗り変えるつもりはなかった。
 
 仕事をしていると、時が経つのは一瞬だ。
 ふと気が付くと、夕食の時間になっていた。
 壁際の置き時計を見るホークの視線に気付き、カールも時計を見る。

「もうこんな時間か」
「そろそろ行かないと、妻を迎えに行く時間に間に合わなくなってしまう。悪いが打ち合わせの続きは明日にしてくれ」
「もちろんです。では、また明日」

 カールは一礼して部屋を出て行く。
 ホークは打ち合わせの資料を揃えて机の端に置くと、まずは厩舎に向かい愛馬のシェリーにエサをやった。そして、一旦部屋に戻って体を清め、着替えてからフィーヌを迎えに行った。

 ドアを開けると、彼女はソファーに座ってぼんやりとしていた。
 
「食事の準備が整ったようだ。行こう」

 ホークの声にフィーヌはハッとしたような顔をする。
 
「……申し訳ございません。疲れていて食欲がなく──」

 フィーヌは言葉尻を濁すとホークから顔を背けた。
 俯き加減の横顔は青白く、どこか視線が彷徨っていた。

「たしかに顔色が悪いな。体調が悪いのか?」

 到着時は元気そうに見えたのに、今は明らかに体調が悪そうに見えた。
 ホークは眉根を寄せて、彼女の額に触れる。

「熱はないようだな」
「……少し休めば大丈夫です」
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