拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
フィーヌはホークと目を合わせることなく、答える。
(移動の疲れからくるものか?)
王都からロサイダー領までは片道馬車で丸三日かかる。戦場での過酷な状況に慣れているホークには全く問題なくとも、貴族令嬢が移動するには辛いのかもしれない。
「わかった。では、食事は部屋に運ばせよう。ゆっくり休め」
「ありがとうございます」
ホークの言葉に、フィーヌは明らかにホッとしたような顔をした。
(あんなにホッとするなんて、よっぽど疲れているんだな)
軍人ばかりのむさ苦しい中で日々を過ごしているので、つい一般的な貴族令嬢の体力を忘れていた。
フィーヌの部屋を出たホークはちょうど屋敷に到着したアンナに対し、食事をフィーヌの自室に運ぶように伝える。
「旦那様はご一緒されますか?」
「いや、別々に食べよう」
ホークは首を横に振る。
ホークがいては、フィーヌが気を遣うと思ったのだ。
「かしこまりました」
アンナは了承の意を込めてお辞儀した。
食後、ホークは食器を下げるアンナを見つけて声をかけた。
「食事は口に合っているようだったか?」
「はい。美味しいといって全て召し上がっておられました」
アンナは笑顔で頷く。
それを聞いて、ホークは少なからずホッとした。ロサイダー領は土地が乾いていて植物が育ちにくい。根菜中心の食卓は王都の貴族令嬢には物足りないのではないかと心配していたのだが、杞憂だったようだ。