拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
(全部食べたのなら、体調も回復してきたようだな)
先ほどの青白い顔を思い出し、よくなったならよかったと安堵する。
(だが、初夜は見合わせたほうがいいか)
無理をさせてまた体調不良になっては元も子もない。
だが、初日に新妻の元を訪ねないのも非礼かと思い、顔だけは見に行くことにした。
その日の夜、ホークは使用人が用意したいつもより飾りの多いナイトガウンを着て夫婦の寝室へと向かった。
フィーヌはベッドの端に、ちょこんと座っていた。
肌がよど良く見えるナイトウェアはひどく扇情的で、透けて素肌が薄ら見える様が劣情を煽る。
だが、ホークはこの日フィーヌを抱く気はなかった。病み上がりの令嬢に無理をさせて抱くような趣味はないからだ。
すぐに自分の部屋に戻ろうと思っていたら、フィーヌは思いもよらないことを言い出した。
「閣下。わたくし達は結婚式を挙げないですね。でも、全知全能の神に対して約束の誓いは立てたいです」
言われたときは、すぐに理解ができなかった。
フィーヌの言うとおりロサイダー領の戦士達は剣を立てて全知全能の神を証人に当主に誓いを立てる『誓約』という儀式を行う。死が隣り合わせの戦場で戦い抜くために、自分たちの決心を神に誓うのだ。
しかし、フィーヌは戦士ではなく妻だ。