拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく

「何事だ?」

 ホークは低い声で聞き返す。
 カールのこの慌てようは、ただ事ではない。

(まさか、また国境地帯に侵略が?)

 最悪の報告が脳裏を過り、ホークは立ち上がる。

「さっき、周辺地域の視察に行ったんです。そうしたら領地が……」
「ああ、何があった」

 ホークは何を言われるのかと、ごくっと唾を飲む。
 
「領地が急に緑になったんです!」

 カールが叫ぶ。

「……は?」 

 ホークの口から漏れたのは気の抜けた声だった。



 カールから話を聞いたホークは、その足で厩舎に行き、馬を走らせた。乗ったのはもちろん愛馬のシェリーだ。

「なるほど。たしかに緑だな」
「はい。そうなんです。俺も最初部下から報告を受けた際は何をバカなことをと思ったのですが、実際に目にすると確かに変化していて──」

 案内したカールも困惑顔だ。

 ロサイダー領は土地は広いものの、その大部分を占めるのは荒れた大地だ。作物は育たず、荒野が広がっている。しかし、今ホークの目の前に広がっているのは青々と草が茂る原っぱだった。
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