拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく

「いつからこうなった? 二カ月前に視察した際は変化なかったはずだ」
「俺も正確な日時はわからないのですが、ここ一、二週間ほどだと思います」
「ここ一、二週間? 一体何が起きたんだ」
「よくわからないですけど……きっと、先の戦いにおける我々の勝利とホークの結婚を祝福して全知全能の神が贈り物をしてくれたに違いないです! もしかしたら、領地に『緑の手』の神恵を持つ者が現れたのかも」

 カールはぱっと表情を明るくして、自分の主張を繰り広げ始めた。
 ホークはそれを、話半分に聞く。
 
(緑の手ねえ……)

 たしかに、あり得ない話ではない。
 だが、神恵はその力を得るだけでも貴重な存在なので、必ず各領事館に届け出をする必要がある。いまのところロサイダー辺境伯であるホークにすら緑の手の持ち主が現れたという情報はもたらされていなかった。
 となると、他に理由がある気がした。
 
(急に緑……。ここまで広大な土地にくまなく肥料をまいたとは考えにくい。それに、作物を育てるわけでもないのに肥料を蒔く理由がない)

 誰かのいたずらというわけでもなさそうだ。
 消去法で神恵を使ったとしか思えなくなるが、緑の手の持ち主はロサイダー領にいない。
 
 そのとき、ホークはハッとした。
 
「もしや、土か?」
「え? どうしました?」

 カールは怪訝な顔でホークに聞き返す。

「いや、なんでもない。俺は屋敷に戻る。お前はここの土地で穀物や野菜が育つか早急に調査するよう、文官達に指示しておいてくれ」
「はい。わかりました」

 カールはしっかりと頷く。
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