拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
王都騎士団はヴィットーレの国中から優秀な剣の使い手が集まっている。その王都騎士団と互角かそれ以上となると、ロサイダー領の戦士がいかに精鋭揃いであるかがうかがい知れた。
時間にして十分ほど経っただろうか。
訓練を眺めるフィーヌ達の後ろから、ガリッと地面の石を踏む音が聞こえた。
「何か面白いものでもあるのか?」
不意に聞こえた低い声にハッとして、フィーヌは振り返る。
「閣下!」
フィーヌは突然現れたホークに驚いた。慌てて頭を下げ、挨拶をする。
「執務の気分転換に散歩に来ました。閣下は訓練の様子を視察に?」
「いや、きみを探しに来た」
「わたくしを? ……もしかして、花を植えたのがお気に召しませんでしたか?」
ホークが執務を抜けてフィーヌをわざわざ探しに来るなど、今まで一度もなかった。それなりの理由があるはずだが思い当たらないので、考えられるとすればそれくらいだ。
「花?」
ホークは首を傾げる。
「屋敷の敷地内のそこかしこに花の苗を植えたのが気に入らないのではないのですか?」
「花の苗……」
ホークは周囲を見回し、たまたま近くに植えられていた苗を見る。
「そうか。これはきみが植えたのか」