拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく


 ホークに連れられて行ったのは、彼の執務室だった。
 寝室の横にある私室とはまた別の部屋で、ロサイダー領主館として文官や戦士達が出入りする場所にある。

「そこにかけてくれ」

 ホークが執務室に置かれたソファーを指したので、フィーヌは腰かける。
 すぐに侍女が紅茶を運んできたので、フィーヌはそれを飲みながら室内を見回した。フィーヌ用の執務室よりも広く、壁際には盾や鎧が飾られていた。

「何か珍しいものでもあったか?」
「鎧や盾が飾られているだなと思いまして」
「ああ」

 ホークは頷く。

「これは飾りではなく本物だ。かつてこれを身に纏って戦った」

 フィーヌはひゅっと息を呑む。

「申し訳ございません」

 フィーヌは謝罪する。彼は命の危険を冒して戦ってきたのだ。装飾と勘違いして不愉快だっただろう。
 
「いや、構わない。それで、きみをわざわざここに呼んだ理由だが──」

 ホークはフィーヌを見つめる。

「屋敷近郊の荒れ地が急に草原に変わった。きみが何かをしたのか?」
「いいえ、何も」

 フィーヌは首を横に振る。

(ヴァルが土壌改良した土地に草が生えてきたのね)
 
 間違いなくフィーヌのせいだが、自分のおかげだと言ってまたバナージにされたように傲慢だと糾弾されるのはごめんだからだ。

「隠さなくていい。きみの神恵は『土の声を聴ける』だろう? 素晴らしい力だな」
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