拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく

「きみも知っての通り、ロサイダー領は土地が痩せていて植物が育ちにくい。農産物も芋くらいしか採れないから、今回の土壌改良は領民一同喜ぶだろう。感謝する」
「そんな……礼には及びません」

 こんな風に褒められて感謝された経験がないので、どういう反応をすればいいのか戸惑ってしまう。ほんのりと赤くなったフィーヌを見つめ、ホークはくすっと笑った。

「それと、これが届いた」

 ホークは一通の封筒をフィーヌに差し出す。

「これは──」

 フィーヌは封筒を裏返す。そこには、かつての婚約者──バナージの実家であるダイナー公爵家の紋章が押されていた。

「開けてみても?」
「もちろん」

 フィーヌは封を切って中身を取り出す。

「結婚式の招待状ですね」

 フィーヌはじっとその招待状を見つめる。
 そこには、四か月後に開催するホークとフィーヌのふたりを招待すると書かれていた。

(この日取りって──)
 
 冷水を浴びせられたかのように、すーっと頭が冷える。
 まだ婚約破棄から四カ月半しか経っていないのに四カ月後には国内貴族を多数招いた大規模な結婚式。一から準備していては間に合わない日取りだ。
 しかも、その日取りはフィーヌとホークが結婚する予定だった日と同じだった。

(随分とバカにしてくれること)
< 68 / 193 >

この作品をシェア

pagetop