拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく

「どうする? 領地を空けられないことを理由に断ることもできるが」
「いいえ、行きましょう」

 フィーヌは首を横に振る。
 
 行かなければ、世間からは婚約者を奪った挙句に代わりに嫁ぐことになった実の妹の門出すら祝いに来ない薄情な姉だとレッテルを貼られるだろう。
 そして、行けば裏切った元婚約者の結婚式に出席する厚顔無恥な女だと陰口を言われる。

 彼らは、フィーヌがどちらを選んでも立場的に辛くなるとわかっていながら招待状を送ってきたのだ。
 
「そうこなくてはな。ロサイダー家の家訓は『敵は徹底的に叩き潰せ。望むものは手段を選ばず奪い取れ』だ。敵を潰すにはまず情報収集をしなければな」
「あら。閣下はあのふたりを敵だと見なしていらっしゃるのですか?」

 言ってから、何を当たり前なことをとハッとする。
 ホークはシェリーという恋人がいながら、バナージに嵌められてフィーヌを娶ることになった。少なからず、恨んでいないはずはない。

「当然だろう? 俺の大事な妻をあんな風に陥れて、侮辱した」
「そうですか」

 ──大事な妻。
 
 たとえそこに愛がなくとも、ホークがフィーヌを辺境伯夫人として大切にしてくれていることはわかる。

 けれど、なぜだろう。フィーヌは一抹の寂しさを感じ、ホークから目を逸らした。


   ◇ ◇ ◇


 ダイナー公爵家には、もうすぐ執り行われる嫡男バナージの結婚式の開催に向けて続々と招待状の返事が届いていた。

「レイナ。フィーヌとロサイダー卿から参加の返事が来たぞ」
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