拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
挙式準備のためにダイナー公爵家に来ていたレイナに見せるように、バナージは片手に持った封筒を上げる。
「まあ、本当ですか。お姉様たちにも祝福してもらえるなんて、嬉しいです」
レイナはにっこりと微笑んで喜びを露わにする。
「俺のレイナは優しいな。あんな姉を今も大切に思っているなんて。まるで天使だ」
「まあ、バナージ様ったら」
うふふっと笑いながら、レイナはバナージにじゃれつく。
(来ないかと思ったけど、来るなんて意外ね)
──レイナがひとつ年上の姉、フィーヌを妬むようになったのはまだほんの五、六歳の頃からだったように思う。
姉は何をするにも有能だった。家庭教師の出す宿題は常に完ぺきにこなし、ダンスのレッスンや礼儀作法も問題なし。ピアノを弾かせればまるでプロだ。
歳が近く、女の子同士。比較されるのはある程度仕方がないとしても、レイナに何かを教えてくれる教師たちは口を揃えて『フィーヌ様はこれくらいすぐにできたのに──』とぼやいた。
(お姉様がなんだっていうのよ)
そんな小さな不満の積み重なりが、レイナのフィーヌへの嫌悪感を蓄積させていく。
そして、フィーヌは十歳になる頃に神恵を授かった。『土の声を聴ける』というものだ。
神恵を持つ人は、ヴィットーレの国内でも千人いるかどうかだ。両親はフィーネに神恵が与えられたことを大層喜んで、社交界で話して回る。そして、その噂を耳にしたダイナー公爵家から、是非長男の婚約者にと望まれたのだ。
(どうしてお姉様ばっかり)
大した苦労もなく何もかも手に入れるフィーネが妬ましかった。
だがそんなある日、転機が訪れたのだ。