拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
「でも、他の鉱山ならいくつかあるぞ」
「他の鉱山? なんの鉱山かしら?」
「うーん。ちょっくら採ってきてやるよ」
ヴァルはそう言うと、忽然と姿を消す。暫くすると、また前触れなく現れて大小さまざまな石をフィーヌの前に置いた。
「たくさん採れそうなのはこのくらいかな」
「ありがとう。たくさん種類があるのね」
フィーヌはしゃがみ込み、ヴァルが持ってきてくれた石を順番に手に取る。
それぞれ少しずつ色や形が違うのは、含まれている成分が異なるからだろう。
(これを見ただけじゃ、わたくしの知識ではなんの鉱石なのかわからないわ)
フィーヌはじっと石を見つめる。金鉱石ならリリト金山で採れたものを何回も見たことがあるのだが、今目の前に置かれた鉱石はどれも違うものに見えた。
(ホーク様に頼めば、何の鉱石かは調べられるかしら? でも、そのあとが問題ね)
ロサイダー領には今現在、鉱山がないので鉱山開発に知見がある人間はいない。鉱山開発をするにあたっては、専門家の知識を借りたかった。
(ダイナー公爵家の金鉱山がもうすぐ枯渇するって言っていたわね。なら、彼に頼めば──)