拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
 フィーヌはヴァルが持ってきた小石を拾い集めると、すっくと立ちあがる。

「フィーヌ、どこに行くんだ?」
「急用を思い出したの。ヴァル、とっても助かったわ。ありがとう!」
「お安いごようだぞ」

 ヴァルは得意げに胸をどんと叩いた。
 

 フィーヌはその足でホークの執務室に向かった。
 トントントンとノックをすると、「入れ」と低い声がする。部屋の中にはホークともうひとり──彼の側近のカールがいた。

「取り込み中でしたら改めます」

 何か打ち合わせをしていたのだと判断したフィーヌは一旦部屋に戻ろうとした。しかし、それを止めたのはホークだ。

「いや、大丈夫だ。きみが日中俺の執務室を訪ねてくるなんて珍しいな。どうした?」
「閣下に相談したいことがあったもので」
「俺に相談?」

 すると、気を利かせたカールが「では、少ししてからまた参ります」と言って立ち上がる。
 フィーヌは代わりに、カールが今座っていた場所に座った。
 
「このような格好で失礼します。閣下」

 フィーヌはまずは謝罪する。フィーヌは今、両手いっぱいに鉱石を抱えてお世辞にも貴族令嬢のする格好ではなかった。
 
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