拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
 ホークは確かにフィーヌのことを辺境伯夫人として尊重し、彼女のやることを後押ししてくれる。それに、食事も一緒に摂るし、フィーヌを蔑むようなことも言わない。
 
(初日にシェリーさんの件を聞かなかったら、きっとわたくしもそう思い込んでいたわね)

 ホークが大切にしているシェリーには未だに会っていない。アンナの話では時折厨房にいるようなので行けば会えるのだろうが、会って何を話せばいいのかわからないのだ。
 立ち聞きしてしまった日、〝命の恩人〟という言葉も聞こえたので、戦時中にけがをしたホークを看病してくれた女性なのかもしれないと思った。

(でも、会いに行っている気配がないのよね。いつ会っているのかしら? もしかして、もう別れている?)

 毎晩フィーヌと一緒に食事をして、寝室も共にしている。日中はふたりとも仕事をしているはずだし、一体恋人といつ逢瀬を重ねているのだろうかと不思議でならない。
 
「フィーヌ。ぼーっとして、どうした?」

 名前を呼ばれてハッとする。いつの間にか、ホークが怪訝な顔をしてフィーヌの顔を覗き込んでいた。 
 
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