拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
 一方その頃、王都のダイナー公爵家の一室では怒鳴り声が響いていた。

「どういうつもりだ? ここ数カ月で金の採掘量が減少している。三カ月前と比較すると、二割減だぞ!」

 バシンと机を叩いて怒りを露わにしたのは、この公爵家の嫡男であるバナージだ。
 そして、机を挟んで彼と向き合っているのはダイナー公爵家の金鉱山の管理を任されているロバート・キュリーだった。

「そう言われましても、鉱山開発は運の影響が大きいです。掘ってもはずれなことはままあることで、この採掘量が確保できているのは──」
「言い訳するな! お前が無能なだけだろう!」

 反論しようとしたロバートをバナージは頭ごなしに怒鳴りつける。

「とにかく、さっさと金を探して掘ってこい!」
「とは言っても、具体的にどこを掘れば──」
「それを考えるのがお前の仕事だ!」

 バナージは怒りを爆発させる。ロバートは肩を竦めた。

「では、フィーヌ様との打ち合わせのお時間を──」
「どうしてフィーヌが出てくるんだ。あいつはもう次期公爵夫人じゃない」
「なんですと? しかし、この件はフィーヌ様が一番精通しています」
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