拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
「はっ。精通だと? バカを言うな。女のくせに一丁前に仕事をしているふりをしやがって。あんなほら吹きで無能なやつは俺から捨ててやった」

 さもおかしいと言いたげにバナージは肘を折り両手を天井に向ける。その様子を見ながら、ロバートは絶句した。

「まさか、フィーヌ様をダイナー公爵家から追い出したのですか?」
「だったらなんだ? 一介の雇われ人であるお前にあれこれ言う権利はない」

 あまりに想定外のことに、ロバートは返す言葉が見つからなかった。

(どおりで最近、お嬢様を見かけないと思っていた)

 フィーヌは何年にもわたって数カ月おきにロバートの元を訪ねては今の鉱山運営状況を確認していた。しかし、数カ月前からぱったりと姿を見せなくなっていたのだ。
 結婚式準備で忙しいのだろうかと思っていたが、まさかこんなことになっていたとは想定外だった。

「お前はそんな余計なことより、金を掘り当てることに集中しろ。……ったく、金の産出を担保に事業を始めたっていうのに──」
「新しい事業?」
「リゾート開発だよ。いいか。さっさと新しい金鉱山を見つけないとお前はクビだからな」
「……かしこまりました」
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