拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
ロバートは一礼し、部屋を出る。
(あの方は本当に、金がそんなに簡単に見つけられると思っているのか?)
金鉱脈を見つけるには、河川沿いで収拾された砂金などを頼りに地道な調査が必要だ。これまでダイナー公爵家が難なく外れなしに金鉱山を掘り当てられていたのは、ひとえにフィーヌの神恵のおかげだった。
「バカなことを……。せめて、公爵様がご健在であれば」
思わず口からため息交じりの声が漏れる。
ダイナー公爵の症状は悪化の一途を辿っている。
莫大な財力を盾に栄華を誇るダイナー公爵家。その地盤が崩れ始めるのを見た気がした。
◇ ◇ ◇
【ヴィラ歴421年12月】
十二月に入り、ロサイダー領にある山はすっかり雪化粧をし始める。部屋から白く染まった山肌を眺めていると、トントンとドアをノックする音がした。
「あら、旦那様」
誰が来たのか確認しに行ったアンナの声が聞こえ、フィーヌは振り返る。
「閣下。いかがなさいましたか?」
「新たに掘削し始めた場所から、フィーヌの言葉通りダイヤモンドの原石が産出された。きみにも報告しておこうと思ってな」