それが例え偽りの愛だとしても
私の声が、思ったよりも大きくなってしまった。

真人様と目が合い、お互いに、ふいに顔を赤くする。

なんて不思議な時間。
なんてやさしい温度。

「やっぱり……婚約者と言えども、結婚前に会うのは、難しかったかな。」

真人様がぽつりとつぶやくその声に、ほんの少し寂しさがにじんでいた。

私は思わず、真人様の指先に触れた。

ごく軽く、小さく、つまむように。

「嬉しいです。そこまでして……会いに来てくださるなんて。」

それは、ほんの少しの勇気だった。

でも——伝えたかった。

この人の言葉が、どれほど私を救ってくれたか。

真人様が、ゆっくりと私の肩に腕を回す。

そして、迷いのない仕草で私を片手で抱き寄せた。

「……君が嬉しいと言ってくれるなら、それで十分だ。」

真人様の胸に、私は小さく収まる。

鼓動が、優しく重なっていくのを感じた。
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