それが例え偽りの愛だとしても
「失礼するよ。」

顔を上げると、見知らぬ男性が門の前に立っていた。

背の高い、洋装の若い男。見覚えはない。

「どうかされましたか?」

私がそう尋ねると、彼はにこやかに笑いながらこう言った。

「中林沙奈さんって、君のことかな?」

胸が一瞬、きゅっと縮こまった。

「……それがどうかなさいましたか?」

すると彼は、ちらりと後ろを振り向き、誰かに向かって言った。

「ここにいたよ、沙奈さん。」

まさか、と思った次の瞬間——

門の向こうから現れたのは、見間違えるはずもない人だった。

「——真人様!」

思わず声をあげてしまった。

しまった、ここは本家の屋敷ではなく、私と母の“隠れ家”のような別邸。

ここに住んでいる姿を見られるなんて、想定していなかった。
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