それが例え偽りの愛だとしても
「ちょっと、羽織ってみない?」

「えっ……」

戸惑いながらも、私はそっと白無垢を手に取った。

重みと、刺繍の温度が、指先に伝わる。

ゆっくりと羽織ると、真人様の目がやさしく細まった。

「……これを着て、明日、俺の家に来てくれるんだね。」

その言葉は、誰よりも優しい“誓い”に聞こえた。

私の心に触れ、奥の奥にあった“願い”を呼び起こす。

——この人の妻になりたい。

たとえ、どんな嘘の上に立っていても。

真人様の腕が、私の肩をやさしく引き寄せる。

「……ああ、いい匂いがする。」

耳元で囁かれたその声は、低く、熱を帯びていた。

鼓膜を通して、身体の奥が震える。

距離が、近い。

顔を上げれば、唇が重なってしまいそうなほどに。

「口づけしても、いいかな。」
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