それが例え偽りの愛だとしても
私は、白無垢をそっと外した。

衣擦れの音だけが、静かな部屋に響く。

続けて着物も脱ぎ、肌襦袢だけになった身体で、真人様の前に一歩、踏み出す。

冷たい床の感触が、足の裏から震えを伝えてくる。

「……沙奈さん?」

真人様の声が、戸惑いを含んで私を呼ぶ。

「明日でも、今日でも——同じことです。」

言葉が震えていた。

でも、止められなかった。

私は真人様の手を取り、自分の胸元にそっと添えた。

鼓動が速すぎて、胸がつぶれそうだった。

真人様は、その行動に驚く様子を見せなかった。

それが、かえって苦しかった。

(……やっぱり、女を知っているんだ)

そう思った瞬間、何かが胸の奥でぽたりと落ちた気がした。

“自分は代わりの女でも務まる”

そんな現実を、突きつけられた気がした。
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