それが例え偽りの愛だとしても
——でも、それでもいい。

そう思ってしまう自分が、もっと嫌だった。

「……お願いです。」

震える声でそう告げた。

それが“愛してほしい”なのか、“確かめてほしい”なのか。

それとも——“子を成すために抱いてほしい”なのか。

自分でも、分からなかった。

(——子供を作れば、離縁されない。)

父の言葉が、もう一人の私の背中を押す。

真実の愛ではない。けれど、それでも“残れる”可能性があるのなら。

私は、自らを差し出すように目を伏せた。

そして真人様は、私を抱きしめてくれた。

ぎゅっと、力を込めて。

「……沙奈。」

その名前を呼ぶ声が、胸の奥まで響いた。

鼓動が跳ね上がる。

「俺、今君を抱いたら——きっと壊してしまいそうだ。」

ドクン、と心臓が跳ねた。
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