それが例え偽りの愛だとしても
その男性が、真人様と並んで私の前に現れる。

「海藤紫炎と申します。真人の親友です。」

……やっぱり。
あの日、別邸に突然現れた、あの人だった。

「……お久しぶりです。」

私は、かすれるような声でそう言った。

紫炎さんの目が、私の顔をじっと見つめている。

「まずは礼を言いたい。真人の元に嫁いでくれて、ありがとう。」

紫炎さんは、穏やかな笑みをたたえながら、深く頭を下げた。

その瞬間、私は思った。
(この人は……悪い人じゃない)

どこか軽薄そうに見えたけれど、真人様の親友として、本当に真人様のことを思っているのだと伝わってきた。

「いやあ、真人は、実に君に惚れてる。」

その言葉に、真人様が飲んでいた酒を吹き出しそうになった。

顔が一気に赤くなる。
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