それが例え偽りの愛だとしても
そんな風に思ってしまうのは、欲張りなんだろうか。

「眠りなさい。俺の腕の中で。」

囁くようなその声に、私はこくりと頷いた。

真人様の胸の鼓動が、夢の入り口でトントンと扉を叩く。

寄り添う寝息が、まるで子守唄のように耳に心地よく響いた。

朝、柔らかな陽光で目が覚めると、真人様が隣で微笑んでいた。

「おはよう、可愛い人。」

その声に、昨夜の記憶が一気に蘇ってくる。

私は思わず顔を両手で塞いだ。

(ああ……私、この方と、あんなに淫らなことを……)

「お、おはようございます。あの……すぐに支度をして、朝ごはんの用意を——」

慌てて言い訳のように言葉を並べる私に、真人様は「うん」と優しく頷いた。

なるべく目を合わせないように身支度を整え、真人様と並んで部屋を出た。

「おはようございます。」

廊下に並ぶ使用人たちが、一斉に頭を下げてくれる。
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