それが例え偽りの愛だとしても
「ふふ、嫁いだばかりの頃はね、刺繍なんて針を持つ手が震えて……。でも、大丈夫よ。あなたなら、きっとすぐに上達するわ。」

やさしい励ましに、私はそっと頭を下げた。

ここに嫁いで良かったと、そう思わせてくれる瞬間だった。

そしてその日から、私はお義母様に付き添って、生け花と刺繍の稽古を受けるようになった。

庭から摘んできた花を前に、静かに鋏を動かすお義母様の姿は、どこか凛としていて美しかった。

一方で、針と糸を手にした時は、優しく微笑みながら私の手元を見守ってくれる。

「まあ、いいわね。沙奈さん、針の持ち方がとても自然だわ。何かしていたの?」

「はい、少しだけ裁縫を……暇つぶしのようなものでしたが。」

お義母様は満足そうに頷いて、にこやかに言った。

「さすがは中林家のご令嬢だこと。やはり、たしなみのあるお育ちなのね。」
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