それが例え偽りの愛だとしても
「いえ……本当に大したことは……」

本当は、父に構ってもらえない寂しさを紛らわせるために始めたものだった。

誰にも見せることのない小さな刺繍。けれど今、それがこうして役立っていることが嬉しい。

お義母様の言葉が、ほんの少し、自分を肯定してくれた気がした。

「嫁いできてくださって、本当に良かったわ。」

その一言に、胸の奥がじんわりと熱くなる。

私は、ここにいてもいいのだろうか。

この家の一員として、少しずつ役目を果たしていけるのだろうか。

花と糸と、優しいまなざしに囲まれて、私はそっと心を整えていった。

「そうだわ。ちょっとお買い物に行かない?」

ふとした午後、お義母様が私に声をかけてくださった。

「お嫁さんと買い物に行くのが、私の夢だったのよ。」

その言葉が嬉しくて、私は自然と笑みを浮かべた。
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