それが例え偽りの愛だとしても
たとえ正妻の名を与えられても、私は“正統”ではない。

なぜ生まれた場所だけで、こんなにも人は裁かれるのだろう。

お義母様は何も知らず、ただ世間を語っているだけなのかもしれない。

けれど、その言葉が、まるで私自身への烙印のように感じられて、私は小さく息を呑んだ。

「沙奈さん?この百合、素敵じゃない?」

「……はい。とても、綺麗です。」

うつむいた私の声は、花の香りに紛れてかき消えた。

「あの……お父様は、浮気などされない方ですよね?」

恐る恐る問いかけた私に、お義母様は笑いながら軽く手を振った。

「浮気なんて、いちいち気にしていたら女房なんてやってられないわよ。」

——たしかに、強い人だと思った。

「たいていは、ただの遊び女。男のたしなみ、ってやつね。」
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