それが例え偽りの愛だとしても
「……はあ。」

けれど次の瞬間、お義母様の笑みがふっと消えた。

「でもね。妾さんは別よ。」

その言葉に、私の心臓がひとつ跳ねた。

「一時期ね、あの人にもいたのよ。妾が。」

さらりと告げたその言葉の奥に、消せない記憶の棘が垣間見えた。

「正妻の私に、“座を譲れ”って言ってくるの。とんでもない女だったわ。」

お義母様は、心底軽蔑するような顔でそう言い放った。

——ああ、だから、あの花屋で見た妾らしき女性にも、あんな冷たい視線を向けたのか。

その瞬間、背中に冷たい汗が流れた気がした。

私は、その“とんでもない女”が産んだ娘。

けれど今、正妻としてこの家にいる。

「……お母様は、強い方ですね。」

やっとの思いでそう呟くと、お義母様はふっと笑った。

「強くならなきゃ、守れないのよ。家も、子も、夫もね。」

その言葉に、私は思った。

——私は、強くなれるだろうか。

この家の“正妻”として、認められる未来は、来るのだろうか。
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