それが例え偽りの愛だとしても
囁くように言うと、真人様は私の頬を包み込んだ。

「遅れてもいい。……君といる方が、俺には大事だ。」

低く掠れた声が、まるで祈りのように耳元に落ちてくる。

「君は俺の妻だ。何も、誰にも遠慮する必要なんてない。」

私はただ、真人様の瞳を見つめ返すことしかできなかった。

その瞳は、私を見つめながら、誰よりも深く、強く、私を欲していた。

体の奥から熱が広がっていく。

胸元が崩れ、肌に空気が触れるたびに、私は真人様を強く意識した。

「旦那様……」

切なさと欲しさが交錯する。私の手が彼の髪に触れた瞬間だった。

「沙奈っ……!」

低く押し殺した声とともに、熱が私の中を貫いた。

「……はぁ、はぁ……」

抑えきれない吐息を、真人様が口づけで塞いでくる。

「愛おしい……何もかも、全部……君が。」
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