それが例え偽りの愛だとしても
「ふふ……さすがは真人様。沙奈様を、きっと大切にしてくださっているのですね。」

ばあやさんはにこにこと頷いて、深く頭を下げた。

「本当にようございました。妾腹のあなた様が、こんなに大切にされているなんて。」

その言葉が、胸に鋭く突き刺さった。

「……え?」

思わずばあやの顔を見つめ返す。けれど彼女は微笑みながら、続けた。

「うまく立ち回っていらっしゃるようでございますし。例え素性が知られても、お子さえできれば……離縁はされませんよ。」

その瞬間、脳内に警鐘が鳴った。

——妾腹
——立ち回り
——離縁

どれも、私が聞きたくなかった言葉だった。

「ええ……うまくやってみせます。」

それしか、言えなかった。

「その意気でございます。お父様も安心なさるでしょう。」
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