それが例え偽りの愛だとしても
“私は、ただの道具じゃない。真人様の、妻なのに。”

なのに、なぜこんなにも不安になるのだろう。

「最近、君の話を使用人たちがしているね。」

庭で草花に水をやっていると、背後から真人様の声がした。

私は振り返らずに、じょうろを傾けたまま答えた。

「……ああ、あのことですか?」

なるべく明るく、気にしていないふりをする。

だけど、手がわずかに震えているのが自分でも分かる。

「私が妾の子ではないかと、疑っているんです。」

じょうろの水が途切れた。

私は立ち上がり、軽くスカートの裾を払って家の中へと向かおうとした。

——けれど、その腕を真人様がそっと取った。

「気にするな。」

低くて、でもしっかりと通る声だった。

「何を言われても構わない。俺が君を、妻だと認めているんだ。」

……妻。
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