私の年下メガネくん
「私でよかったら」
 答えると、彼がほっとしたように表情を緩めた。
 それだけで楓子の胸が高鳴る。
「実をいうと、私も緊張してたの」
「花蔵さんが? いつも冷静沈着で仕事もばっちりなのに?」

「ぜんぜん違うよ。失敗したらって不安ばっかり。いつ課長から雷が落ちるか、びくびくしてるの」
「課長、怖いですよね」
 くすっと彼が笑うから、口が滑らかになる。

「風屋くんと同じで私も課長に育てられたの。びしばしとスパルタで」
「わかります。最初、『これの発注かけてみろ』って、ど新人の俺に言うか!? ってびびりながら仕事してました」

「私もやられた! だけど、課長すごいよね。いけるって見極めたらどかっと発注して捌ききるんだもん」
「あの度胸と手腕は真似できないですね」

「風屋くんも年間ではすごい売ってるじゃない。柿田君は失敗も多いから、実利益では風屋くんが上だよ」
 そう言うと、葵の顔がぱあっと輝いた。
「嬉しいです、憧れの花蔵さんに褒めて頂いて」
「憧れって」
 楓子は思わず身じろいだ。

「へ、変な意味じゃないです。花蔵さんのこと、希望の星っていうか、姉弟子みたいに思ってて、安定したヒットもあってすごいなって」
 頭をかいてしどろもどろになる葵に、楓子はふふっと笑った。
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